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東京高等裁判所 平成2年(行ケ)201号 判決 1992年10月27日

大阪府門真市大字上馬伏四二六番地の一

原告

ホーシンプロダクト株式会社

右代表者代表取締役

中尾治

右訴訟代理人弁護士

口佳彦

大阪府大東市太子田三丁目三番二四号

被告

松田工業株式会社

右代表者代表取締役

松田隆博

右訴訟代理人弁護士

玉井真之助

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告

「特許庁が昭和六三年審判第一一二八八号事件について平成二年六月一五日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二  被告

主文同旨の判決

第二  請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

訴外亀井嘉征は、名称を「ジョイント式コンクリート型枠用セパレータ」とする登録第一六一二九一三号実用新案(昭和五二年一二月二日出願、昭和六〇年四月三日出願公告、同年一〇月九日設定登録、以下「本件考案」という。)の実用新案権者であるが、被告は、昭和六三年六月二一日同訴外人を被請求人として本件考案の登録無効の審判を請求し、昭和六三年審判第一一二八八号事件として審理され、その間、原告は、同訴外人から本件実用新案権の譲渡を受け、平成二年一月一〇日特許庁長官に対しその旨届け出をしたが、同年六月一五日「登録第一六一二九一三号実用新案の登録を無効とする。」との審決があり、その謄本は同年八月二三日原告に送達された。

二  本件考案の要旨

A  一端に隣接コンクリート型枠3、3の接当端面間に挿入して離脱可能に係止固定される係止部1aを有し、かつ、他端に長尺バー接続部1cを有する二つのジョイント台1、1の接続部1c、1cにビン4、4を介してその長手方向両端部を接合可能な中間バー2とからなるジョイント式コンクリート型枠用セパレータであつて、

B  前記両ジョイント台1、1の各接続部1c、1cのそれぞれにその長手方向に沿つて適宜ピツチで複数のビン接合孔1d、1d・・・を設けるとともに、

C  前記中間バー2は、一定の長尺物で、かつその長手方向に全長に亙つて、前記両ジョイント台1、1に形成したピン接合孔1d、1d・・・のピツチと異なるピツチで多数のピン接合孔2a・・・を形成し、

D  前記ジョイント台1、1のピン接合孔1d、1dと必要寸法に切断した中間バー2のピン接合孔2aとの選定した孔1d、2dにピン4、4を挿入すべく構成した、

E  中間バー2と二つのジョイント台1、1からなるジョイント式コンクリート型枠用セパレータ

(別紙図面一参照)

三  審決の理由の要点

1  本件考案の要旨は、前項記載のとおりである。

2  これに対し、本件出願前である昭和五一年一一月二日に出願され、登録第一三八八九六一号として登録された昭和五一年実用新案登録願第一四八三八五号(昭和五五年実用新案出願公告第四四一一七号公報(以下「先願公報」という。)参照)の考案(以下「先願考案」という。)の要旨は、先願明細書及び図面(別紙図面二参照)の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲第一項に記載されたとおりのものであつて、それを構成要件に分節すると、次のとおりである。

a 所定間隔隔てて位置するコンクリート型枠に対する一対のジョイント台2、2の中間に位置してこれら両ジョイント台2、2を互いに接続する中間接続金具であつて、

b 長手方向に沿う凹条とした補強凹部を一体的に形成するとともに、

c 少なくとも長手方向両端寄り位置において、それぞれ、前紀両ジョイント台2、2に対する接続部3'、3'を、その長手方向に沿つて適当間隔隔てて複数個形成してあることを特徴とする

d コンクリート型枠用セパレータの伸縮調整用中間接続金具。

3  そこで、本件考案と先願考案とを対比すると、先願考案の構成要件aにおける「ジョイント台2、2」は、先願明細書(先願公報四欄二七行ないし三五行)及び図面の記載からみて、隣接型枠5、5の周側板5'、5'に挿入され、離脱可能に係止固定される扁平部分1を有するものであり、さらに、「中間接続金具」は、先願明細書(先願公報三欄七行ないし一二行)及び図面の記載からみて、ジョイント台2にピンを介して接合されるものであると解されるので、本件考案の構成要件Aと先願考案の構成、要件aは、実質的に同一である。

次に、先願考案の構成要件cにおける「両ジョイント台2、2に対する接続部3'、3'を、その長手方向に沿つて適当間隔隔てて複数個形成してあること」は、先願明細書(先願公報四欄一三行ないし二六行)及び図面の記載からみて、両ジョイント台2、2の各接続される部分のそれぞれに、その長手方向に沿つて適宜ピッチで複数のピン挿通孔としての被接続部2'、2'・・・が設けられており、さらに、中間接続金具3は、一定の長尺物で、かつその長手方向に全長に亙つて、前記ジョイント台2、2に形成したピン挿通孔としての被接続部2'、2'・・・の間隔と異なる間隔で多数のピン挿通孔としての接続部3'、3'・・・が設けられていることにより、大きい範囲に亙つての粗調整を可能とするとともに微調整をも可能にしたものであるので、本件考案の構成要件BないしDと先願考案の構成要件cは、実質的に同一である。

さらに、先願考案では、構成要件bを備え、中間接続金具3が一体的に形成された、長手方向に沿う補強凹部を備えているのに対し、本件考案では、その中間バーがこのような補強凹部を備えている旨の明確な記載は、その構成要件中にはない。

しかしながら、本件明細書(本件出願公告公報(以下「本件公報」という。)四欄八行ないし一〇行)及び図面には、中間バーの唯一の実施例として、長手方向に沿う凹条、すなわち断面Uの字状としたものが開示されているだけであり、この断面Uの字状の形態が補強作用をすることは当業者にとつて自明のことであるから、本件考案の構成要件A、C、D、Eにおける「中間バー」は、長手方向に沿う補強凹条を一体的に形成した中間バーと解さざるを得ない。

してみると、本件考案は、先願考案の構成要件bを備えていると解することができる。

さらにまた、本件考案の構成要件Eと先願考案の構成要件dは、単に用語が相違するのみであつて、実質的な差異はない。

以上要するに、本件考案と先願考案は、それぞれの実施例を参酌すると、全構成要件間に実質的に差異がなく、目的・作用効果においても格別な差異があるとは認められないから、結局、両者は実質上同一であるとするのが相当である。

4  したがつて、本件考案は、先願考案と同一であり、実用新案法七条一項の規定に違反して登録されたもので、同法三七条一項一号に該当し、同法三七条一項の規定により無効とすべきものである。

四  審決の取消事由

本件考案及び先願考案の要旨が審決の理由1及び2認定のとおりであること、本件考案と先願考案との対比において、本件考案の構成要件Aと先願考案の構成要件a、及び本件考案の構成要件Eと先願考案の構成要件dは、実質的に同一であることは認めるが、審決は、両者の構成の相違点を看過した結果、本件考案の構成要件BないしDと先願考案の構成要件cとが実質的に同一であると誤つて認定し、かつ、本件考案の構成要件としない事項を構成要件と認定した結果、本件考案は先願考案の構成要件bを備えていると誤つて認定したものであつて、違法であるから、取り消されるべきである。

1  本件考案の構成要件BないしDと先願考案の構成要件cが実質的に同一と認定したことの誤り

(一) 本件考案の中間バーは、「一定の長尺物」であることを要件とする。

ここに「一定の長尺物」とは、本件明細書に「鋼材から、使用されるべき長さの最大長さに相当する一定長さをもつ」(本件公報四欄八行、九行)と記載されているとおり、本件出願当時における鋼材の技術水準に基づく物質的特性上の制約を受けた、さらにいえば運搬する場合の法律上及び実際上の便等からの制約を受けた、使用されるべき最大長さのものである。

従来は、種々の長さのセパレータを必要とする場合に対処すべく長さの異なる種類の中間バーを製造して作業現場に搬入して、適当な長さのものを選択使用し、あるいは中間バーを分割してそれらのピン製造箇所を選定することによりセパレータの長さを調整していたため、一品種多量生産によるコストダウンが期待できず、その取扱い、管理及び選択、選定が極めて煩わしい、という問題点があつた(本件公報二欄一〇行ないし二四行)。

そこで、本件考案は、前記問題点を解決することを技術的課題(目的)として、中間バーを、製造段階において種々の場合において必要となる種々長さのうち最大長さに相当する「一定長さの長尺物」とする構成を採用し、これを一品種多量生産しておき、かつ一括して作業現場に搬入し、現場で必要任意長さに切断して使用するようにし、所期の作用効果を奏するものである。

これに対し、先願考案の接続部を形成する中間接続金具(本件考案の「中間バー」に相当する。)は、「一定の長尺物」であることを要件とするものではなく、その明細書及び図面には接続部を一定の長尺物とすることは全く記載されていない。そして、先願公報の考案の詳細な説明中に、「中間接続金具を製造するに当たつて、非常に長大なものを補強凹部を有する状態で生産して、これを必要長さに切ることによつて多数の中間接続金具が一挙に作成できるため、製造作業能率の向上およびコストダウンを図ることができる」(三欄一四行ないし一九行)と記載されているように、工場での生産段階で必要長さに切るのであるが、現場毎に対向型枠の離間距離が異なるから、これに対処するため長さの異なる種々の中間接続金具を多数用意しなければならない。

すなわち、先願考案の中間接続金具は、先願公報に「複数個の接続部のうち、適当なものを選択して」(三欄七行、八行)と説明されていることからも明らかなように、「一定のもの」ではなく、あらかじめ種々の長さのものを数種類生産しておき現場でその中から適宜選択され使用されるものであるから、使用に適した種々長さに形成された複数もしくは多種類のものであり、また「長尺物」ではなく、そのままジョイントして使用されるに適した長さに形成された(本件考案の長尺物に比して)短尺のものである。

したがつて、中間バーの構成において、本件考案と先願考案とは相違するから、本件考案の構成要件BないしDと先願考案の構成要件cが実質的に同一とした審決の認定は誤りである。

(二) 本件考案の構成要件C及びDによれば、本件考案の中間バーに形成されたピン接合孔(先願考案のピン挿通孔に相当する。)は、その形成されている位置が中間バーの長手方向に全長に亙つていること、間隔は両ジョイント台1、1に形成したピン接合孔1d、1d・・・のピツチと異なるピツチであること、数は多数形成してあること、を特徴とする。

これに対し、先願考案の構成要件cによれば、先願考案の中間接続金具のピン挿通孔は、少なくとも長手方向両端寄り位置に形成されていること、それぞれ両ジョイント台2、2に対する接続部3、3をその長手方向に沿つて適当間隔隔てて形成されていること、複数個形成してあることを特徴とする。

したがつて、本件考案と先願考案のピン接合孔は、その位置が本件考案では中間バーの全長に亙つているのに対し、先願考案では少なくとも長手方向両端寄り位置である点、間隔が本件考案ではジョイント台のピン接合孔とピツチが異なるのに対し、先願考案では適当間隔とされているだけでジョイント台のピン接合孔との対応関係が明確でない点、数が本件考案では多数とされているのに対し、先願考案では複数欄とされている点において、相違する。

そして、この相違は、本件考案の中間バーが「一定の長尺物」であつて、一品種多量生産しておき、かつ一括して作業現場に搬入し、現場で必要任意長さに切断して使用するようにしたものであるため、全長に亙つて多数のピン接合孔をジョイント台のピン接合孔とは異なるピツチで形成する必要があるのに対し、先願考案では、長さの互いに異なる多種類のものを製造しかつこれを現場に搬入していちいち適当長さのものを選択使用するから、本件考案のように構成する必要がないことに基づく

したがつて、ピン接合孔の位置と数の構成において、本件考案と先願考案とは相違するから、本件考案の構成要件BないしDと先願考案の構成要件cが実質的に同一とした審決の認定は誤りである。

2  本件考案は先願考案の構成要件bを備えていると認定した誤り

本件考案は、その構成要件及び考案の詳細な説明に記載された考案の目的、作用効果から明らかなように、中間バーの断面形状についての考案でなく、その形状を考案の対象とするものではない。

また、中間バーの断面形状は、ジョイント台におけるジョイント部分の形状との関係で、L字形、I字形、V字形、横一字形その他各種各様のものがあり、実施例として示したU字形はあくまで考案の一実施例にすぎず、その形状に限定する意図は全くない。それ故にこそ、本件考案の出願人は、断面形状は実施例の説明にとどめ、構成要件としては一切触れていない。

しかるに、審決は、本件考案の要件としない事項を構成要件と認定した結果、本件考案は先願考案の構成要件bを備えていると認定する誤りを犯したものである。

第三  請求の原因に対する認否及び被告の主張

一  請求の原因一ないし三の事実は認める。

二  同四の審決の取消事由は争う。審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はない。

1(一)  本件考案の構成要件である「一定の長尺物」については、考案の詳細な説明をみても、何に対して長尺なのか記載されていないし、具体的数値例も一切記載されていない。

本件考案においては、<1>二つのジョイント台と、<2>その各接合部に調整可能に接合される中間バー、<3>中間バーは所望の長さに切断可能、という三つの構成要件があれば、中間バーを一品種多量生産することができ、一定の長尺物として、原告の主張するような作用効果を期待することができるものである。

一方、先願考案も、<1>二つのジョイント台と、<2>その各接合部に調整可能に接合される中間バー、<3>中間バーは所望の長さに切断可能、という三つの構成要件を備えているから、一定の長尺物として本件考案と同様な作用効果を期待することができ、両者は実質的に同一である。

原告は、先願考案の中間接続金具は、あらかじめ種々の長さのものを数種類生産しておき現場でその中から適宜選択され使用されるものである旨主張する。

しかしながら、先願考案は、そのように限定された構成のものではない。先願考案は、従来のセパレータが一体物で構成されていたため、現場ごとに対向型枠の距離が異なる場合等に長さの異なる種々のセパレータを多数用意しておかなければならなかつた等の事情に鑑み、「前記中間バー部を、その両端のジョイント部から分離することにより、上記不都合を解消せんとしたものである」(先願公報二欄三二行ないし三四行)。先願考案が本件考案の目的として原告が主張する、一品種多量生産を可能にしてコストダウンを図るとともに、その取扱い、管理及び選択、選定を容易にできるという目的を達成できることは、先願公報の三欄七行ないし一二行、三欄一三行ないし一九行の記載から明らかである。

(二)  先願考案は、「少なくとも長手方向両端寄り位置において」多数のピン挿入孔が形成してあることを構成要件とするものであり、本件考案の長手方向に全長に亙つて多数のピン挿入孔が形成してあるものも右構成要件に含まれることは、先願公報記載の図面(別紙図面二)から明らかである。

そして、先願考案の「中間接続金具を製造するに当たつて、非常に長大なものを補強凹部を有する状態で生産して、これを必要長さに切ることによつて多数の中間接続金具が一挙に作成できるため、製造作業能率の向上およびコストダウンを図ることができる」(先願公報三欄一四行ないし一九行)ことを目的とする立場からは、長手方向両端寄り位置のみにピン挿入孔があるものでなく、全長にピン挿入孔のある中間バーをもつて構成することが先願考案の技術的思想の中心になつていると判断される。

したがつて、本件考案と先願考案は、ピン接合孔の構成において実質的に同一であり、審決の認定に誤りはない。

2  考案の同一性の判断において、「実質的に同一」という場合、実用新案登録請求の範囲の記載から両者の構成が同一と認められる場合のみならず、考案の詳細な説明及び図面中に記載された考案の実施例を通じて実用新案登録請求の範囲の構成となつていることが認められる両者の構成が同一と認められる場合をも含むから、審決が明細書の実施例の記載から本件考案は先願考案の構成要件bを備えていると認定したことに誤りはない。

第四  証拠関係

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

一  請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、同二(本件考案の要旨)、同三(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決の取消事由について検討する。

1  成立に争いのない甲第二号証によれば、本件明細書には本件考案の技術的課題(目的)、構成及び作用効果について次のとおり記載されていることが認められる。

(一)  本件考案は、一端に隣接コンクリート型枠の接当端面間に挿入して離脱可能に係止固定される係止部を有し、かつ、他端に長尺バー接続部を有する二つのジョイント台と、これら二つのジョイント台の接続部にビンを介してその長手方向両端部を接合可能な中間バーとからなるジョイント式コンクリート型枠用セパレータに関する(本件公報一欄二四行ないし三欄二行)。

このようなセパレータは、旧来の全長が断面円形のロツド状のものに比して、型枠のコンクリート受止面にロツド端部挿入用の貫通孔を不要とする、セパレータの型枠に対する連結と隣接型枠同士の連結を同時に行うことができる、ジョイント台の一品種多量生産が可能である、製品コストを低減できる等の利点がある。しかし、作業現場毎に使用すべきセパレータの長さが相違し、また同一現場でも上部幅と下部幅の異なる断面台形状の山留めコンクリート壁を作成する際に種々長さのセパレータを必要とするので、これに対処するため長さの異なる多種類の中間バーを製造し、かつこれを現場に搬入して適当な長さのものを選択使用したり、二ないし三に分割して製造し、それらのビン接続箇所をいちいち選定することによりセパレータ長さを調整したりするため、中間バーを一品種多量生産することによるコストダウンを期待できず、その取扱い、管理及び前記選択、選定が極めて煩わしく、かつセパレータ長さの微調整が困難という問題点があつた(同二欄三行ないし二五行)。

本件考案は、前記知見に基づき、中間バーにつき、殊にその製造段階において一品種多量生産を可能にしてコストダウンを図るとともに、その取扱い、管理も容易にでき、かつセパレータ長さの調整が容易で、しかもその調整範囲を微小な間隔でできるジョイント式コンクリート型枠用セパレータを提供することを技術的課題(目的)とするものである(二欄二六行ないし三欄四行)。

(二)  本件考案は、前記技術的課題を解決するため、本件考案の要旨(実用新案登録請求の範囲)の記載の構成(一欄二行ないし二二行)を採用した。

(三)  本件考案は、前紀構成を採用したことにより、「ジョイント台は勿論、中間バーも一品種多量生産で賄うことができるため、大幅なコストダウンが図れるとともに、中間バーのすべてが一定長であるため取扱い、管理が非常に容易であり、しかも、適用箇所に見台つた長さに任意に切断するため、多数種のなかから最適のものを一つだけ選択するといつた煩わしさも解消できる。更に、ジョイント台と中間バーの双方に互いにビツチの相異なるピン接合孔を設けてあつて、これら両孔の位置選択により、セパレータ長さの微調整が行なえる。書わば、中間バー切断による粗調整と互いにビツチの異なる孔位置選択による微調整との二段調整を、適用箇所毎に実施するものであるから、調整範囲を大きく拡大し得、所望の非常に正確なセパレータ長さ調整が可能となる。」(三欄二六行ないし四一行)。

2  一方、先願考案の要旨が審決の理由2認定のとおりであることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第三号証によれば、先願公報には、その実施態様として「前記補強凹部の対向両側壁部には前記ジョイント台2、2を接続するための一対の接続部3'、3'が、各組が同一位相箇所に位置する状態で、長手方向の全長範囲において長手方向に沿つて適当等間隔おきに、ビン挿通孔として、多数組穿設形成されている。(「穿形成」は「穿設形成」の誤記と認める。)(中略)各ジョイント台2の折曲部分の対向両側壁部には、一対の被接続部2'、2'が、各組が同一位相箇所に位置する状態で、長手方向に沿つて、前記接続部3'、3'の長手方向隣接間隔よりも小さい適当等間隔おきに、前記ビン挿通孔として多数組穿設形成されている。」(三欄四〇行四欄七行ないし一二行)と記載され、その構成が別紙図面二に開示されており、さらに、先願考案の奏する作用効果について、「前記複数個の接続部のうち、適当なものを選択して、この中間接続金具の両端部を一対のジョイント台に接続することにより、種々長さのセパレータを構成することができ、対向型枠の離間距離変化に、適切かつ簡単に対処することができる。又、補強凹部は金具長手方向全長に亙つて形成したものでは、この中間接続金具を製造するに当たつて、非常に長大なものを補強凹部を有する状態で生産して、これを必要長さに切ることによつて多数の中間接続金具が一拳に作成できるため、製造作業能率の向上およびコストダウンを図ることができる。(中略)副次的効果として、ジョイント台として一品種多量生産することが可能となり、ジョイント台の作成を容易、安価に行なわせ得る利点もある。」(三欄七行ないし二六行)、前記実施態様のものの奏する作用効果として、「接続部3'、3'、被接続部2'、2'が長手方向において多数設けられていることにより、大きな範囲にわたつての粗調整が可能であるとともに長手方向隣接間隔が両者で互いに異なつているために、微調整も可能となつている。」(四欄二一行ないし二六行)と記載されていることが認められる。

3  本件考案と先願考案との対比において、本件考案の構成要件Aと先願考案の構成要件a、及び本件案の構成要件Eと先願考案の構成要件dは、実質的に同一であることは当事者間に争いはない。

原告は、審決は、本件考案と先願考案との中間バーの構成及びビン接合孔の位置、ビツチ、及び数の構成についての相違点を看過した結果、本件考案の構成要件BないしDと先願考案の構成要件cとが実質的に同一であると誤つて認定した旨主張するので、まずこの点について検討する。

本件考案の構成要件Cには、「前記中間バー2は、一定の長尺物で」と記載されているが、右記載に本件考案の要旨とする他の構成要件を参酌しても、当業者がここに「一定の長尺物」とは、技術的に何を意味するか一義的に理解することはできないと認められるので、その技術的意味は、明細書の発明の詳細な説明及び図面を参酌して認定すべきものである。

そこで、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面を参酌すると、前掲甲第二号証によれば、本件明細書の考案の詳細な説明には、「中間バーは、製造段階において、種々の場合において必要となる種々長さのうち最大長さに相当する一定長さの長尺物とし、かつ(中略)一品種多量生産しておき、かつ(中略)現場で必要な任意長さに切断したのち二つのジョイント台に接続してセパレータを構成する」(本件公報三欄一六行ないし二五行)、「中間バーの長さがすべて一定長さであるため」(同三欄二八行、二九行)、「鋼材から、使用されるべき長さの最大長さに相当する一定長さをもつ状態で断面Uの字状に形成された長尺な中間バー2」(同四欄八行ないし一〇行)と記載されていることが認められる。

右記載事項に前記1認定事実を総合すると、当業者であれば、本件考案の構成要件Cにおける「中間バー2は、一定の長尺物」とは、中間バー2が種々の場合において必要となる種々長さのうち最大長さに相当する一定の長さのものであることを意味し、その長さは、そのまま又は適宜切断して用いることにより、通常の需要の大半を満たすことができる長さであれば足りるものと理解するというべきである。そして、本件考案の構成要件Dでは、「必要寸法に切断した中間バー2」とのみ記載され、一定の長さに製造された中間バーをどの段階で必要長さに切断するかは、本件考案の要旨ではなく、取扱いの便宜や作業能率等を考慮して、適宜決めればよい使用方法に関することであり、しかも切断しないでそのまま使用することもあるのであるから、本件考案における「必要寸法に切断した中間バー2」とは、必要寸法に切断して用いることができる構成の中間バーを意味するものと理解される。

これに対し、先願公報には、中間接続金具(本件考案の「中間バー」に相当する。)を製造するに当たつて、非常に長大なものを補強凹部を有する状態で生産して、これを必要長さに切ることによつて多数の中間接続金具が一挙に作成できる旨記載されていることは前記2認定のとおりであり、当業者であれば、この記載において「非常に長大なもの」とは、切断によつて必要長さの中間接続金具が作成されることに鑑み、切断しないでそのまま使用するものを含め、通常の需要の大半を満たすことができる長さのものを意味すると理解するものと認められる。

したがつて、先願考案の中間接続金具は、通常の需要の大半を満たすことができる一定の長さのものを含むというべきであるから、本件考案と先願考案は、中間バーが「一定の長尺物」である点において実質的に同一というべきである。

次に、本件考案の構成要件C及びDによれば、本件考案の中間バーに形成されたピン接合孔は、その形成されている位置が中間バーの長手方向に全長に亙つていること、間隔は両ジョイント台1、1に形成したピン接合孔1d、1d・・・のピッチと異なるピッチであること、数は多数形成してあること、を構成要件とするものであることが認められる。

これに対し、先願公報には、その実施態様として、ピン挿通孔(本件考案の「ピン接合孔」に相当する。)方向の全長範囲において長手方向に沿つて適当等間隔おきに、被接続部の間隔とは異なる間隔で多数組穿設形成されて接続部を形成しているものが開示されていることは、前記2認定のとおりであるから、先願考案は、ピン接合孔の位置、ピッチ、及び数の構成において本件考案と実質的に同一の構成を含むことが明らかである。

したがつて、本件考案の構成要件BないしDと先願考案の構成要件cとが実質的に同一であるとした審決の認定に原告主張の誤りはない。

4  次に、原告は、審決は、本件考案の構成要件としない事項を構成要件と認定した結果、本件考案は先願考案の構成要件bを備えていると誤つて認定したものである旨主張する。

前記1認定事実によれば、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、中間バーが先願考案の構成要件bのように「長手方向に沿う凹条とした補強凹部を一体的に形成する」構成であることは記載されていない。

しかしながら、前掲甲第二号証によれは、本件明細書の考案の詳細な説明中に記載された実施例には、中間バーは「鋼材から、使用されるべき長さの最大長さに相当する一定長さをもつ状態で断面uの字状に形成された長尺な中間バー2」(本件公報四欄八行ないし一〇行)をもつてs構成されることが記載され、その構成が別紙図面一第1図ないし第3図に示されており、この断面uの字状の形態が補強作用を有することはその構成からみて当業者に明らかである。

したがつて、本件考案の構成要件A、C、D、Eにおける「中間バー」は、先願考案の構成要件bと実質的に同脚の長手方向に沿う凹条とした補強凹部を一体的に形成した構成のものというべきである。

この点について、原告は、本件考案は、中間バーの形状を考案の対象とするものではなく、また、中間バーの断面形状は、ジョイント台におけるジョイント部分の形状との関係で、各種各様のものがあり、実施例として示したu字形はあくまで考案の一実施例にすぎず、その形状に限定する意図は全くない旨主張する。

しかしながら、明細書の考案の詳細な説明中に記載される実施例は、出願人がその考案において最良の結果をもたらすと思うものであり、考案の同一性を判断するに当たり、実用新案登録請求の範囲からみると、先願考案の構成が、当該考案の対象たる物の構成に、ある限定を付加した点のみで相違し、その余の点において同一である場合に、当該考案の実施例として開示されたものの構成が先願考案において付加された構成と一致するときは、当該考案は、先願考案の実用、新案登録請求の範囲に記載された技術的事項をその範囲内で具体化したものにほかならないから、先願考案と当該考案とは実質的に同一というべきである。そうであれば、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、中間バーが先願考案の構成要件bのように「長手方向に泊う凹条とした補強凹部を一体的に形成する」構成であることは記載されていないが、本件明細書に本件考案の実施例として先願考案の構成と件bと同一のものが開示されている以上本件考案は先願考案と同一のものを含むことが明らかであり、原告の前記主張は理由がない。

したがつて、本件考案は先願考案の構成要件bを備えているとした審決の認定に誤りはない。

5  以上のとおりであるから、本件考案と先願考案は、実質的に同一であつて、審決に原告主張の違法は存しない。

三  よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は、失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条の各規定を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 成田喜達 裁判官 佐藤修市)

別紙図面一

<省略>

別紙図面二

<省略>

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